介護アロマとフットトリートメント

 やっと秋らしい陽気になってきましたね。いよいよ今週【介護とアロマテラピー講座】と介護職の方の受講も多い【足から全身をととのえる】フットトリートメント講座を開催いたします。

 さて、なぜ介護の現場でフットトリートメントが注目を集めているのでしょうか。講座の中でシェアする予定ですが、ここでもほんの少しお話しようと思います。

 老人ホームなどの高齢者施設に入所されているお年寄りの方に関わる機会が多いので必ずチェックするのですが、足がむくんでいる方が本当にたくさんおられます。それにはいくつかの理由があります。歩くことが不自由で車椅子の方は特に、座っている時間がどうしても長くなります。足は下へさげっぱなしで、しかも1日中靴を履いていることがほとんど。一般的な日本人の生活スタイルではあり得ないことですよね。リハビリテーションの専門家の立場でみると、身体に合っていない車椅子を使っている方がやはりとても多いので、膝の裏側が座面に圧迫されているケースもよく見かけます。さらに、以外な盲点となるのが下着の締めつけです。冷えたらいけないから、と心配して着やスパッツ…いわゆるが長めのパンツやズボン下の類を何枚も重ね履きしているとこれらが足の付け根の部分を(鼠径部といいます)圧迫していることがあります。これらはすべて足のむくみの原因になっているのです。

 ベッドから車椅子への乗り移り(移乗動作・トランスファー)の介助量が多い方は特に朝、車椅子に移乗したら夜、寝るまでほぼ座りっぱなしというケースすらあります。立ち上がる機会はトイレの時くらい。認知症の影響だったり、介護スタッフのマンパワーの問題など仕方がない部分もあるのですがやはり、ご本人にとっては苦痛が大きいと思います。きっと私たちが想像する以上の苦痛なのではないかと思うのです。自分自身に置き換えて考えると、椅子に座ったままの姿勢で身動きが取れない状態をどのくらい耐えられそうですか?授業・講義などを想像すると2時間が限界でしょうか。


 

 下肢に麻痺がある方などそもそもむくみが出やすい疾患の方も多くおられますから、なおさら切実な問題となります。むくんでいる期間が長くなってくるとブヨブヨしたものから指で押してもすぐには元に戻らない硬い性状のものにかわります。指で押したり、動かすだけで強い痛みを訴えます。痛みがあると足を動かしたり立ったり、歩くことに拒否的になります。やがて関節の動きは悪くなり、筋力も低下していまいます。痛みを伴わなくても、むくみによって足底の感覚が悪くなるので(「足の裏に餅がはりついているようだ」と言われたことがあります)床や地面の微妙な凸凹や段差が足の裏から感じにくくなり、転びやすくなります。高齢者の転倒による骨折は寝たきり⇒認知症へとつながる大問題です。

 むくんだ足指は靴の中で圧迫されて、爪や皮膚のトラブルや関節の変形をきたしやすくなります。むくみのある足は血流が低下していて皮膚に栄養が行きにくいため、爪や皮膚は弱くなりトラブルになりやすいことに加えて、一度できたキズは治りにくくなります。やはり痛みを伴うので歩く機能や立ち上がる動作に大きく影響してしまいます。 

 痛みなどの苦痛から、運動することへの意欲は低下しがちになりますし、活動意欲が失われてしまうとうつ症状や認知症を進行させます。

 車椅子のお年寄りという極端な例を挙げましたが、足のむくみは私たちのからだとこころに大きな影響を与えるものなのです。リハビリテーションでよく行われる足のむくみに対するアプローチとしては●高所挙上(足を高くする)●ストレッチング●自動運動(自分の力で動かす)●歩行や立位姿勢をとることなどがあります。これらひとつひとつは決して専門的な難しいテクニックなどはなくて、誰にでも自分ひとりでもできる内容ばかりなのですが、痛みや苦痛を伴うものもあります。その点、フットトリートメントや足浴は取り入れやすいケア法だと思います。
 フットトリートメントは、寝たきりや認知症の進行を「予防する」私たちの心身の「健康を維持する」大切な役割のひとつとなり得るものです。アロマテラピーで行われるハンドトリートメントは心への作用が大きいけれど、フットトリートメントは生活の質(QOL)に直結するケアなのです。